1.芥 川 × 跡 部



つーかあんたほんと、最低。

流行りの香水でありもしないフェロモンを香わせ、甘ったるい声で寄りかかってくる女の決め台詞は決まっていつも同じものだった。
自分の性格は確かに屈折している、否定する知人が1人としてないのだからそれは認めざるを得ない事実であり、しかし目の前で腰を振るこの男よりはいくらかマシであろうとも思う。


「跡部ってぇ、ジイシキカジョー?っつーよりぃ、ビョーキだよねぇ。金持ってなきゃ誰も見向きしねーよ」


下半身に潜り込む牡の熱さは何度逢瀬を重ねようとも慣れるものではない。


「そこんとこちゃんと分かってんの?」


性別の壁を捩じ曲げて、その制服にありったけの金を捩じ込んで、金髪の男に無理矢理迫ったその行為は今日で4度目だった。


「跡部なんかいてもいなくても世界は回るし、俺だって誰だって全然生きていけんだよ。死んじゃっても誰も悲しまないかもー、なーんてね」


跡部なんか死んじゃえー、笑いながら男はだらしなく喘いでぽっかりと開いた俺の口にポケットの万札を詰め込んだ。死ね、死ね、跡部なんか死んじゃえ、小さな手が俺の喉を締め付ける度につぶれたカエルのような嗚咽が漏れる。


「あーだけど俺」


濡れた紙幣の苦みと恋心。


「跡部の顔は好きだなぁ」


まったく最低だ、広げられたケツの痛みと生理的な快楽に涙を流しながら、俺はどこかの映画の1シーンのように呟いた。けれど万札を詰め込まれた口はもごもごという声にならない声を上げるだけで、男の耳にそれが届くことは決してない。


「顔以外はぜーんぶ大嫌い。あははー」


お前が好きだ、好きだ、届かないことは知っている、愛されないことも分かっている。金も、セックスも、俺とお前の鼓動さえも全ては無意味で、しかし俺はそれでも叫ばずにいられない。お前なしではいられないのだ。



(ある意味私のジロ跡はこれ以上ない)



2.桃 城 × 菊 丸



好きだとか大切だとか、そんな甘ったるい口先三寸なんかよりも、肌と肌を触れ合わせた方がずっと分かりやすいんだよ。


「知らねーの?」


額に脂汗を浮かべて、何度もどもりながらやっとの思いで口にした一世一代の告白に、英二先輩はひとしきりげらげらと笑ってそう答えた。
一度もこちらを振り返ることなく柔軟を続けるその後ろ姿に、せんぱい俺のこと嫌いですかと問いかける。


「だぁってさぁ、お前男じゃん」


ホモかよ、あはははありえねぇ。

それじゃあ先輩は猫じゃないすか、羽交い締めにしてやりたい衝動をぐっと堪えて、でも俺は先輩とやりたいです、と尚も食い下がった。


「お前きもい」


先輩が振り返る。笑う。あぁ今なら俺、恋で死んでもいい。



(2人合わせてバカ2乗)



.手 塚 × 不 二



手塚、考えてみればこうして君にあらたまって手紙を書くのは初めてなような気がするね。電話やましてデリカシーのかけらも無いメールなんかでこんなことを伝えるのは難しいなと考えて、この白い便箋、封筒、それから切手を買ったんだ。


僕は君が好きです。もう、ずっと前から。


驚いた?それともまたいつものように眉間の皺を深めただけなのかな。
でもね、僕は驚いてる、まさか自分が同性愛者だとは思わないじゃない。信じたくはない、けれど認めるよ、僕は君が好きなんだ。
どうしてなんて考えるのもバカらしいほど、僕は君が好きみたいだ。

今からこれを君に届けに行こうと思う。新幹線はあと3分で発車だよ。バカみたい、切手なんていらなかったのに。でもね不思議、不安はないんだ。君を失う気はしない。


僕は君に会いに行くよ。君はどんな顔をするだろう




(九州は遠いなぁ)



4.大 石 × 菊 丸



おまえの首筋にかじりついたのは赤茶けた猫であっておれじゃない、ねぇそんなとこなめまわして何がしたいの。


「英二」


何それ知らないにゃーにゃーにゃー


「英二かわいい」


好きだなんてわかんねぇよ、あいしてるって何のこと。
おれ猫だし頭、わるいもん、おれの辞書にそんなものこれっぽっちだってないんだ、嘘じゃねぇよ嘘なんて猫がつけるわけがないじゃんか、もっともっともっとからみつけよべろべろに甘やかしてバカみたいにかわいがれ、最後まで責任持つのが飼い主のギムでセキニンってやつ、大丈夫、やさしいおまえはきっとひとりぽっちのおれを見捨てることなんてできないからさ。


あーきもちいーもっとにゃでてー



(にゃん菊をたまに無性に書きたくなる)



5.芥 川 × 千 石



はじめてのキスはレモン味と言うけれど、おれのそれはあまずっぱいそれと似ても似つかなかった。なぜかって、おれがキヨの頬を思いきりぶん殴って無理にそのくちびるに噛みついたからだ。キヨとのはじめてのセックスにほんの少しのここちよさも感じられなかったのは、俺がそのかたい穴に無理矢理ちんこをおさめただからだ。いつもきれいにセットされているオレンジ色の髪とかわいらしくゆがんだ顔は汗と涙と泥と血でもうぐしゃぐしゃで、うわぁすげーきたないレイプってかんじぃ、と俺が笑うと、感じじゃなくてこれはレイプそのものでしょ、とキヨもまたあきれたように笑う。

跡部あいしてるよ、耳元でささやいてやると、キヨもまた、あとべくんあいしてるとつぶやいた。二度目のキスは苦くてかなしい、どうしてかなんてわからない。


(跡千が受同士のちちくりあいならジロキヨは攻同士のちちくりあい






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