「いつまで泣いてんだよ」





千石清純と書いてセンゴクキヨスミと読む頭のおかしな男とシーツの隙間を共有した。その口の中の温度を知ってから1時間で、互いの温度さえも共有した。

仕掛けたのは俺で、求めたのは男で、抱き合ったのは、まぁなんというか欲情すれすれの雰囲気と成り行きと、つまりはノリだ。ありえない男同士のセックス、もちろん許される行為では決してない。しかし若さとは時に世間のルールや常識を欠落させてしまうものであるから仕方が無いのだとその行為に関しては諦めもつくが、こんな風な齢14に似つかわしくない冷静さでもって自らを解する俺とは対照的に抱いた男の方はというと、俺がそのケツから萎えた自身を引き抜いた次の瞬間それが何かのサインであったかのようにうわぁぁぁぁんと声を上げてベッドに突っ伏したまま、小1時間経った今もぼろぼろぐずぐずひくひくめそめそ、欝陶しいこと限りない。





「あーうぜぇ」






今すぐにでも裸のままゴミ袋に突っ込んで窓の外に放り捨ててやりたいという衝動をぐっと堪え、床に散った男の白い制服の胸ポケットから煙草を取り出す。2、3服したところで男は涙とぐしゃぐしゃの顔を上げ、シルクのシーツで思いきり鼻をかんだ。





「おれたちがさ」

「アァ?」

「おれたちがさ、こうやってやらしいことしてるあいだにも人がたくさん死んでるんだよねぇ」






チョコレートの味を知らないやせこけた子供、恋人の写真を胸に銃弾に倒れる兵士、名前のないままポリバケツに入る赤ん坊。





「おれは世界のために泣いてるんだ」





鼻を鳴らした男が、俺の肩口に頬をすり寄せる。






「おれは世界のために泣ける男だよ、めぐまれない人たちのために、かわいそうな人たちのために涙を流せる」

「アーン?そんなのただの偽善じゃねぇか」

「偽善じゃないよ欺瞞だよおごってるんだおれ、今すごいしあわせだから。おれね、たぶん世界のしあわせみんな吸い取っちゃったんだ、だからこんなありえないラッキー、跡部くんと今いっしょにこうしてひとつの」






そこまで一気に吐き出すと、男はまたベッドにうずくまりしゃくりあげた。





「ごめんなさい、おればっかり幸せでごめんなさい、おれがわるい、跡部くんはわるくないんだ、わるいのは、ぜんぶ、おれ、で」





あぁ、なんて不器用でバカな男なんだ。与えられて当然の幸せなんて甘ったるく享受してりゃいいのにそれを拒み、しかし不幸にもなれそうにない不器用でバカでかわいそうな男。頭のおかしい男。世界のために泣ける男。おいセンゴクキヨスミ、おまえは告白も満足にできねぇのか?










F I N .




書きたかったのはシーツと鼻水


CLOSE.





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