わがままおてんば甘えんぼう・スウィートキティのファンタジックワールドへ踏み込まないで色ボケ男!ママのところにお帰りなさいよ何時だと思っているの!




「アーもういい、飽きた」

「ふーん」


ほんの十数秒前まで組み敷かれた下で矯声をみーみーあげてわめいていた同性の恋人が、ひどく冷めた目でもって言った。無機質な女性は冷静に時を告げる、ポッポッポッポーン、午後、11時、53分、10秒を、お知らせいたします。


「やだ、ストップ、やめて、おーいし」


365日が気まぐれに満たされた彼のこと、こんな勝手は慣れていると心の耳を塞ぐようにしてその小さな右の乳首を舌で転がしていると、少しの沈黙を置いて急所を含む下腹部にどすりとした痛みが走る。声にならない叫びを上げてベッドにうずくまる俺の後頭部に鋭い踵が落ち、俺は2重の呻きを上げた。


「や・め・ろっつってんだろ」

「…そこは反則だよ、英二」

「うんダメー、俺のかわいいヒザこそうがおまえのガマン汁でぬるぬる、汚い」


そのかわいらしい顔からは想像もつかないようないやらしい悪態をついて、小さな子供が何かどうしようもなくすてきなおもちゃでも見つけたように目を輝かせると、彼は透明に粘った膝を俺の目の前にずいと突き出し、ほころんだばかりの雛菊のように笑う。


「なーめーて、おーいし」


長い睫毛から覗く視線に胸をどきりとさせながら、命じられた通りに舌を出して膝に這わせた。かわいいかわいい、俺だけの英二。


「アー…だいすき、おーいし」


答えの代わりに太股の内側を軽く噛んで吸い上げると、彼はその細い腰を子猫のように震えくねらせて、飽きたという舌の根も乾かぬうちにあぁんと喘ぐ。ひとつ、ふたつ、口づけが彼の白い脚を赤い花びらで飾り、その足首に言いようのない感動を覚えそして俺はまた欲情した。


「英二、好きだよ」

「おーいし、だいすき」


視線をからめて鼻先を触れ合わせ、その甘ったるい口唇の感触を貪ろうとしたその瞬間を、ピリリリリ、愛想のない電子音が遮る。PM11時56分は中学3年生の出歩く時間では決してなく、簡単に予想ができすぎてしまう電話越しの相手に心の内でごめんなさい、と呟く。あなたの最愛の嫡男はこんな日のこんな時間にこんなところで同性と抱き合っています、あなたにいただいたたくさんの愛情、その他のもろもろは全て目の前のこのひととこうしてこの良き日に抱き合うためのプロセスであったと信じているのです。


「英二、また、電話。母さん」


持ち主よりも先に彼は俺が脱ぎ捨てたジーパンのポケットで激しく自己主張を続ける銀色の携帯を手にとり、緑色の光をぺかぺか放つ液晶画面を確認した。少しだけ考え込むような仕草を見せて、それを俺に差し出す。


「ありが(とう)」


と、笑ったのもほんのつかの間、英二はその名前を見せつけるかの如くそれを天井に高く高く掲げ、煙草のヤニで変色が始まっている白い壁にかかった陳腐な絵画の天使以上にかわいらしく微笑むと、その両端をがっしりと掴み


「オラァ!」


まっぷたつにへし折った。


「…英二」


生まれたばかりの雛菊か、はたまた震える子猫か、いいえそれは俺の英二です。今夜はずっと俺といっしょにいたいと思っているのなら、横着しないでその小さなくちびるを動かせばいいのに。分かっているよ俺だけは分かっているよ、だって君は俺の英二なんだから、そんなわがままだってかわいいよ。


「何が、母さんだよ」


分裂した携帯電話を床に叩きつけて彼は俺に荒々しくのしかかる。


(おてんばなところや)

「おーいし、おまえさぁ、おれのケツの皺の数言えるだろ。乳首の色、形、ぜんぶ記憶して1人でシコシコシコってザーメン吹き出すくせに」

(甘えんぼうなところも)

「そんなかんたんな言葉でまさか終わらせられるなんて思ってんじゃないだろうな、オラ」

(かわいい、かわいい、かわいい)

「優等生のおーいしがさ」

(かわいい、かわいい、かわいい)

「俺のケツにちんこ入れたくてうずうずしてんの」

(かわいい、かわいい、かわいい)

「なんか、背徳的、あはは、やらしい、どきどきする」


ここは繁華街の片隅、現代の歪みに薄く汚れたラブホテル。少年2人は抱き合って、肛門性交に勤しむころには日が変わる。壊れた携帯電話が例え母親からの着信履歴で満たされていたとしても、それは彼らを留め置く材料になどなりはしない。


(携帯)

(無断外泊)

(母さんに、何て言おう)

(きっと、ものすごく)

(怒られるだろうな)

(泣かれるかも)

(ごめんなさい)


「ねぇ、何考えてんの」


かわいいかわいい、俺だけの英二。


「俺以外のこと考える必要あんの」

「無いかもね」

「うん、うん、ありえない」


古びたスプリングをぎしぎし鳴らして体中の筋肉という筋肉を酷使しながら俺たちは抱き合う。かわいい俺の英二、かわいいよ、かわいいね、かわいいな、大きなお鍋でぐらぐらことこと煮込んでぺろりと食べちゃいたいくらいだ。その脈打つ胸の奥は甘いかな、もしもとんでもなく苦くったって、俺は甘いと笑って君に口づけするよ。そのくちびるは甘いかな。




わがままおてんば甘えんぼう・スウィートプッシーのファンシー地獄へウェルカムダメダメ男!午前0時ですよコングラッチュレイション15才!





「おおいし、誕生日おめでと」

「うん。英二、祝福のキスは?」

「ハァ?おまえキモッ!」

「あはは、かわいい、英二、かわいい」










F I N .




電波な大石、タイトルは再びBBの映画より


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